tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「障碍者」表記の出現時期

 「障碍」を持つ人々の総称である「障碍者」という言葉はいつごろ出現したのであろうか。

 筆者はこれまで第二次世界大戦終戦後、傷痍軍人や傷病兵、その他障碍のある人たちを対象に、欧米式概念の一つである福祉施策を実施するに当たり、その必要から戦後生まれた表記ではないかと推測してきた。そして、1932年(昭和7年)にできた救護法の文中にある「精神的又は身体的障碍のある者」との記述を「障碍者」の原型と位置付けてきた。

 ところが、最近になって、佐藤久夫先生(日本社会事業大学名誉教授)より、戦前の学術論文の中に「障碍者」と「障害者」両方の記載例が見つかりましたとのご指摘を受けた。

 佐藤先生がCINII学術論文データベースで「戦前」「障碍者」「障害者」のキーワードで全文検索された結果出てきたものである。

 検出された6論文の内4件が「障碍者」で全て医学論文であるのに対し2件はいずれも東京帝国大学航空研究所の論文であった。

 幕末に緒方洪庵先生が洋書を日本語に訳された際は全て「しょうがい」は石偏の碍

を用いて「障碍」と和訳されたことは確認済みであり、医学界ではその伝統が終戦までは保たれていたことの証左となるであろう。

 さて、問題は2件の「障害者」表記の方にある。ここにはウ冠の「害」が使用されている。筆者はこれまで《昔の人は偉かった、明治政府が和製漢語の「障害」表記の使用を奨励しても、人に対してウ冠の「害」が使用された例は見つかっていない。きちんと使い分けていたにちがいない》とあちこちで述べてきたが、ここでは正にそのものずばりで「害」が人に対して使われている。参りましたというしかありません。

 但し、これは専門的な科学技術の論文中のことであり、法令等や著名な作家の作品中など多くの人の目に触れる場面での事例ではないので、私の論調を再考する要素にはならないと愚考する。しかしながら我々は記述の正確性には最大限の配慮が必要であり義務でもあるので、佐藤先生の貴重なご指摘に対し厚くお礼申し上げる次第です。

 「障碍者」表記の出現時期については、これまで《戦後》だと申し上げてきましたが、潔く《昭和初期》に訂正させていただきます。

 

 

 

:::::::::::::::::::::::::::

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。

こちらは自由に複製していただいて結構です。

https://bit.ly/2OIP0nX

:::::::::::::::::::::::::::