「碍」と福祉新聞投稿記事
「障碍者」の表記に関連して福祉新聞(全国紙)への投稿記事が目につきましたので記録も兼ねて以下に転載します。
【投稿記事】福祉新聞(平成25年7月1日付) 「障害者」より良い呼称に 小川勉(62)島根県益田市
障害者差別を禁止する法律が制定されました。差別を禁止するという法の趣旨には大いに賛成する者ですが、根本の「障害者」という呼称について、もっともっと私たちは真剣に考え、知恵を出し合う必要があるのではと考えます。
島根県や私が住む益田市では「障害者」という表記は問題があるとして、過渡的に「障がい者」と表記しています。
過渡的というのは、「障がい者」と「害」の字をひらがな表記にしただけではまだまだ大きな問題を抱えているからです。
障害物という言葉がありますが、これは邪魔になる物、障害になる物という意味です。このことを考えると、人を表す「障害者」という言葉がいかに問題であるのかはすぐ分かることです。意味内容から言えば、まだ「被害者」というのが適切な言葉になるわけです。
それにしても、人を表す言葉に「害」という字が使われ「障害者差別解消法」という法律名称が使用されるとすれば、そのこと自体が人権侵害ということになると思います。
日本語の貧しさ、被障害者を表す言葉の貧困さを思います。子どもたちの間に被障害児を「がいじ(害児)」と差別する言葉が現にあることを、国会議員さんや法律を制定する人は知らないのでしょうか。
いい機会です。被障害者が人間として豊かな存在であるということ、暮らしやすく住みやすい地域社会を作ってゆくための核になる大きな存在であるということを知らしめるいい表現について考えてゆこうではありませんか。
(NPO法人代表、社会福祉士)
投稿者の小川勉さんが指摘されているように「障害者」と「害」の字の誤用を放置して法律名を「障害者差別解消法」のままにすれば法律の表記自体が差別を助長するものとして訴えられても文句は言えないでしょう。
日本国は近々障害者権利条約(外務省仮訳)を批准しようとしています。障害者差別解消法は国内法ですが障害者権利条約は国際条約であり典型的な人権条約です。早急に誤用を是正しないと人権侵害で訴えられることまではなくとも、同じ漢字圏内で恥をかくことになることは確実でしょう。代替表記として「障碍者」をお薦めしている所以です。