tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」と「法令における漢字使用」

 平成22年に常用漢字が改訂された際に、「常用漢字表」の告示と同時に内閣訓令「公用文における漢字使用等について」が定められたことに伴い、「法令における漢字使用等について」が内閣法制局長官名で発出されています。(昭和56年内閣訓令第1号「公用文における漢字使用等について」はこれを廃止するとされています)

 これには 1.漢字使用について(1)法令における漢字使用は、次の(2)から(6)までにおいて特別の定めをするもののほか、「常用漢字表」の本表および付表、並びに「公用文における漢字使用等について」の別紙1「漢字使用について」の(2)によるものとする・・と記載されています。

 文中、・・・次の(2)から(6)までにおいて特別の定めをするもの・・・の中の(5)−ア には以下の記述があります。

 常用漢字表にない漢字で表記する言葉及び常用漢字表にない漢字を構成要素として表記する言葉並びに常用漢字表にない音訓を用いる言葉の使用については、次によるものとする。
 
 ア 専門用語等であって、他に言い換える言葉がなく、しかも仮名で表記すると理解することが
   困難であると認められるようなものについては、その漢字をそのまま用いてこれに振り仮名
   を付ける。
  
  【例】暗渠 按分 蛾 瑕疵 管渠 涵養 強姦 砒素 埠頭

 イ 省略

 ウ 仮名書きにする際、単語の一部だけを仮名に改める方法は、できるだけ避ける。
 
  【例】 斡旋  →  あっせん ( あっ旋 は使用しない )
      煉瓦  →  れんが  ( れん瓦 は使用しない )

 以上により、平成22年の常用漢字改訂以後の、法令における漢字の使用は、これらの定めに従うことになります。

 そこで「障碍」の表記との関係がどうなるかです。「障碍」は常用漢字外の「碍」をその構成要素として表記する言葉であり、(5)−ア の対象になると理解します。そうであれば
「障碍」が「専門用語等」に含まれるかどうか。「専門用語等」に含まれるのであれば「その漢字をそのまま用いてこれに振り仮名を付ける」即ち「障碍」にルビを振ればよいということになります。「障碍」は今もそのままで経典に頻出する仏教用語であり、医学者の間で使用される医学用語でもあります。古くは緒方洪庵が医学用語としてたびたび使用しています。現在も胃腸障碍や脳障碍など頻繁に使用されています。更には工業分野でも碍子・碍管・碍盤など専門用語として多数使用されています。例示されている数例の言葉と比較しても「障碍」は「専門用語等」として十二分に通用するでしょう。

 他方、この十数年来「障害」表記は「害」に問題があるとして「害」のひらかなの「がい」への書き換え、即ち「障がい」表記が急速に進行中ですが、上記の(5)−ウによれば「仮名書きにする際、単語の一部だけを仮名に改める方法は、できるだけ避ける。」ということですので「障がい」表記は国の指導方針に反するということになります。

 そうだとすれば、「障碍」表記は「碍」を常用漢字に加えずとも、(5)−アを活用し、ルビを振ることにより、法令等の公式表記として使用可能ということになります。(5)−ウを併せて考えればむしろ「障碍」表記の普及こそ好ましいとも言えるでしょう。「障碍」表記の実現を企図する自治体に今求められているのは若干の「勇気」ではないでしょうか。

 「碍」の常用漢字への先行追加が王道であることは言うまでもありませんが、追加と普及(使用頻度)は鶏と卵の関係にありますので使用を先行して追加を促すのも一方策かと思われます。