tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」と兵家連

兵家連(ひょうかれん)は公益社団法人兵庫県精神福祉家族会連合会の略称です。会長は本條義和氏。兵庫県内のこころに障碍のある方の家族の結集を目指して、地域家族会および病院家族会が加盟してつくられています。兵家連は1969年(昭和44年)9月に連合会を結成して以来、心的障碍(精神障碍)についての正しい知識の普及や、心的障碍者の医療や福祉の向上をめざして活動しています。

兵家連の構成団体の一員である芦屋家族会より兵家連に対し普及啓発活動の一環としてオリンピック・パラリンピックでの「障碍」「障碍者」表記の採用の提言を依頼したところ兵家連の理事会で審議・承認され、10月22日付で東京都の組織委員会あてに送付されました。

本條会長は全福連(全国精神保健福祉会連合会・略称みんなねっと)の会長も兼務しておられ、且つ人権分野にも明るい方であることから今後の広がりに期待しているところです。

以下に提言書の全文を掲載します。


                                       2014年10月22日
(一財)東京オリンピックパラリンピック
    競技大会組織委員会 御中   

(写)東京都福祉保健局障害者施策推進部

                           公益社団法人兵庫県精神福祉家族会連合会
                                会長  本條 義和 

 【オリンピック・パラリンピックに関連した「しょうがい(しゃ)」の漢字表記】

冠省 掲題につき「しょうがい(しゃ)」の漢字表記に、正しい、全ての漢字圏で共通に理解可能な「障碍(者)」(しょうがいとルビをふる)を採用されることを提言します。来る2020年のオリンピック・パラリンピックには近隣の漢字圏諸国よりも多数の障碍当事者並びに関係者の来日が予想されますが、中国・(香港)・台湾や准漢字圏の韓国では全て「しょうがい」を「障碍」と表記しています。台湾では「碍」と本字の「礙」の両方が使用されています。 「障害」と「がい」に「害」の漢字を当てているのは日本だけです。漢字圏では「碍」はobstacleやbarrierを意味するのに対し「害」はharm, injure又はkillをも意味します。因みに中国ではバリアフリーを「無障碍」と表記しています。

従い、オリンピック・パラリンピック関連の施設や標識あるいは各種資料に「障害者」と表記されていると、漢字は表意文字ですから漢字圏から来る人たちは「害」の字を見て不愉快に感じるでしょう。それで済めばよいのですが、中にはオリンピック精神にもとる差別表記であるとして人権問題に発展する怖れさえあります。

 「障害者」表記に慣れている日本人の間でも問題視する人が出てこないとも限りません。現に日本では11の道府県が苦肉の策として「障がい者」と「まぜ書き」を採用しています。

このような無用の誤解を招かぬよう、予め配慮しておくことが賢明だと考えます。「障碍(者)」表記の採用をお奨めする所以です。

鳩山内閣時に法令など公文書の「しょうがい」表記をどうするかの検討が閣議決定されましたが、一定の検討はなされたものの、時間の制約や政権交代もあって未だ結論が出ていません。検討の過程で内閣府障がい者制度改革推進本部)によりパブリックコメントが実施され、国民に「しょうがい」の公式表記を問いかけましたが、その結果では従来の「障害」支持が4割に対し「障碍」支持も4割と拮抗し、いずれにも決め難いとして「保留」になった経緯があります。

他方、文科省常用漢字の改定に当たりパブリックコメントを実施した結果、「碍」の字が追加希望字種の2位(実質トップ)に位置しました。このため「碍」の字を常用漢字に追加するかどうかは実質的に内閣府での検討結果と判断に委ねられた形で今日に至っています。いずれのパブリックコメントもオリンピック・パラリンピック招致決定以前になされたものです。

従い貴準備局にてオリンピック・パラリンピック対策の一環として「障碍(者)」表記の採用の是非をご検討いただき、採用される場合には、まえもって文部科学省文化庁国語課)と協議され「碍」の字の常用漢字への追加を要望されることをお勧めします。文科省側には追加を検討される用意があるものと推量されます。

「しょうがい」の表記の問題は単に障碍者の関心事であるばかりでなく、幅広い分野の国民の関心事でもあります。例えば馬術の「障害飛越競技」は漢字圏での国際競技では「障碍飛越競技」と表記されています。日本碍子が社名(通称)をやむなく日本ガイシに変更したことは広く知られています。特に最近では「害」の誤用を正すため「碍」の復活を願う声が知識層を中心に高まっています。

その背景として、日本でも他の漢字圏諸国同様、古くから「障碍」表記が一般に使用されていたのですが、幕末のころ日本のみで「障害」という表記が使われはじめ、明治期以降「障碍」と「障害」が同義で使用され混在するようになったものです。戦後の占領政策の一環としての漢字制限の流れの中で当用漢字(1946年制定)から「碍」の字が外され教育の場から消え、今や「碍」はなじみの薄い漢字になっています。最近また復活の傾向にありますが。

「障碍」表記問題はこれまで国会でもたびたび採りあげられています。文部科学委員会の質疑で2回、質問主意書として2回、すべて「障害」は「障碍」と表記すべきとの立場での質問です。

以上のような背景もご勘案いただき、来る2020年のオリンピック・パラリンピックでは「障碍(者)」表記の採用をご検討いただきたく、伏してお願い申し上げます。  
                                           敬具