tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」とAMSCによる提言

昨年7月に「障碍」表記の採用につきAMSC理事長名で2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室長あてに提言書を提出しておりますので記録のため以下に掲載しました。


                                       2014年7月吉日
2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室
室長 平田 竹男(内閣官房参与)様

                    
                         社会福祉法人芦屋メンタルサポートセンター
                             理事長 寺内 嘉一                            
   
    【オリンピック・パラリンピックに関連した「しょうがい(しゃ)」の漢字表記】

冠省 掲題につき「しょうがい(しゃ)」の漢字表記に、正しい、全ての漢字圏で共通に
理解可能な「障碍(者)」を採用されることを提言します。

来る2020年のオリンピック・パラリンピックには近隣の漢字圏諸国より多数の障碍当事者並びに関係者の来日が予想されますが、中国・(香港)・台湾や準漢字圏の韓国では全て
「しょうがい」を「障碍」と表記しています。台湾では「碍」と元字の「礙」の両方が使用されています。 「障害」と「がい」に「害」の漢字を当てているのは日本だけです。漢字圏では「碍」はobstacleやbarrierを意味するのに対し「害」は harm又はkillをも意味します。因みに中国ではバリアフリーを「無障碍」と表記しています。

従い、オリンピック・パラリンピック関連の施設や標識あるいは各種資料に「障害(者)」と表記されていると彼等は皆驚くでしょう。驚くだけで済めばよいのですが差別表記であるとして人権問題に発展する怖れさえあります。不要の誤解が生じぬよう予め配慮しておくことが賢明だと考えます。「障碍(者)」表記の採用をお奨めする所以です。

鳩山内閣時に法令など公文書の「しょうがい」表記をどうするかの検討が閣議決定されましたが、一定の検討はなされたものの、時間の制約や政権交代もあって未だ結論が出ていません。検討の過程で内閣府障がい者制度改革推進本部)によりパブリックコメントが実施され、国民に「しょうがい」の公式表記を問いかけましたが、その結果では従来の「障害」支持が4割に対し「障碍」支持も4割と拮抗し、いずれにも決め難いとして「保留」になった経緯があります。

他方、文科省常用漢字の改定に当たりパブリックコメントを実施した結果、「碍」の字が追加希望字種の2位(実質トップ)に位置しました。このため「碍」の字を追加するかどうかは実質的に内閣府での検討結果と判断に委ねられた形で今日に至っています。いずれのパブリックコメントもオリンピック・パラリンピック招致決定以前になされたものです。
従い貴推進室にてオリンピック・パラリンピック対策として「障碍(者)」表記の採用をご決断いただき、「碍」の字の常用漢字への追加を文科省宛に要望されれば、文科省サイドは同意される状況下にあると愚考します。

「しょうがい」の表記の問題は単に障碍者の関心事であるばかりでなく、幅広い分野の人々の関心事でもあります。例えば馬術の「障害飛越競技」は漢字圏での国際競技では「障碍
飛越競技」と表記されています。日本碍子が社名(通称)をやむなく日本ガイシに変更したことは広く知られています。特に最近では「害」の誤用を正すため「碍」の復活を願う声が
知識層を中心に高まっています。

その背景として、他の漢字圏諸国同様、日本でも古くから終戦まで「障碍」表記が一般に
使用されていたのですが(明治期に入りなぜか日本のみで「障碍」と「障害」が同義で使用され混在するようになりましたが)戦後の占領政策の一環としての漢字制限の流れの中で当用漢字(1946年制定)から「碍」の字が外され教育の場から消え、今や「碍」はなじみの薄い漢字になっています。

1956年になり文部省は通達で障碍の「碍」を、ただ音が同じという理由だけで、全く語源や意味が異なる「害」で置換するよう指導しました。漢字制限の流れの中でやむをえぬ措置だったとはいえ、この差し替え指導が不適切であったとの指摘がなされているわけです。

「障碍」表記問題はこれまで国会でもたびたび採りあげられています。質問主意書として
2回、文部科学委員会の質疑で2回、すべて「障害」は「障碍」と表記すべきとの立場での質問です。

以上のような背景もご勘案いただき、「碍」の常用漢字への追加と「障碍(者)」表記の採用をご検討賜りたく伏してお願い申し上げます。    
                                          敬具