tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」と自殺対策

警察庁の自殺統計によれば2007年度の自殺者数は33,093人でこれで1998年度から10年間連続して3万人の大台を記録したことになります。未遂者の数は不明ですがいずれにせよ大きな数であり大変な事態です。


国際的な自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)ではOECD諸国中断然1位をキープして今日に至っています。(直近韓国が1位になったとの情報もありますが)国・社会の無策の結果といわざるをえません。


これを交通事故死者数と比較すれば無策が判然とします。交通事故死者数は1995年に10,679人だったものが2007年には5,744人と半減しています。この間に諸対策が積極的に実施されたことは皆さんご承知のとおりです。やればできるのです。


内閣府刊行の自殺対策白書(H20版)によれば自殺の原因・動機は特定できた者については「健康問題」が第1位で63.3%続いて「経済・生活問題」31.5%「家庭問題」16.2%となっています。(重複あり)不特定者は全体の29.9%です。


問題はこの過半を占めている「健康問題」の中身です。多くが「うつ病」を主とした精神疾患と推定されます。原因・動機の特定が出来ない人(全体の約30%)の多くも「うつ状態」を経由しての自殺であることは容易に推測可能です。「経済・生活問題」や「家庭問題」と分類された人達の中にも「うつ状態」に陥っての自殺のケースが多く含まれるでしょう。例外はあるにしても今の日本で「食うに困って」というケースはそう多くはありません。


だとすれば「自殺対策」≒「精神疾患対策」ということになります。医薬の発達により「うつ病」など精神疾患は大部分が治癒可能です。統合失調症のように治り難い分野もありますが適切に治療すれば自立して地域で社会生活を営むことのできる状態に回復可能といわれています。そのためには精神保健福祉の充実こそ焦眉の急です。


米国は「精神疾患者」を治療することにより生産力のロスを防ぐとの考え方です。そのためメンタルヘルス分野に巨額の予算を投じています。日本は全く逆の発想で「排除」「隔離」して「適当に保護する」との「臭いものに蓋」の姿勢です。本当はそんなに臭くはないのですがなますを吹いている感すらあります。日本のメンタルヘルス関連予算、自殺対策予算は微々たるものです。


そろそろ「碍」との関連を書きましょう。前述のように日本ではメンタルヘルスの分野を忌避し目をそらし真正面から見ようとしない風土があります。自殺の原因の表記にしても「健康問題」とぼやかして書くので国民にはわかりにくく国が大方針として掲げている「精神疾患に関する正しい知識の普及・啓発をつうじての国民の意識の変革」の促進を阻害しています。「健康問題」と書くのではなく「精神疾患など」あるいは「うつ病など」と書いて実体を国民に知ってもらう努力をすべきなのです。


他方「精神障害」などと誤解を招くことばには鈍感で放置したままです。これでは精神科の敷居が低くならないのは当然でしょう。精神科の先生方は「精神」ということばすら避けて「神経科」とか「心療内科」といったソフトな表現を心がけておられます。その「精神」に「害」が付加されているわけですから。


国民の意識が「風邪も精神疾患も誰もが罹る病気じゃないか・お医者さんにみてもらおう」ということに変り「精神科」の敷居が低くなれば自殺は確実に半減するでしょう。


「碍」が常用漢字に追加されれば厚労省も呼称変更を検討するでしょう。既に問題意識はあるのですから。「障害保健福祉部」が「障碍保健福祉部」に変わるやもしれません。将来的には法律用語も改変に向うのではないかと思います。先ずは官民揃って意識の変革に着手することこそ急務でしょう。


「碍」の常用漢字への追加が嚆矢となり国民の精神保健福祉への関心が高まり意識が変われば確実に自殺は劇的に減少するでしょう。「碍」と自殺対策を結びつけるのには若干の無理があることを承知で書きました。


私が最終的に目指しているのは「精神障害」→「心的障碍」です。「心的障碍」は一案でありこれにかわる適当な言葉があれば勿論それでもかまいません。呼称の変更は国民の意識の変革を助けるツールと位置づけています。雅子さまも阿部元首相も社会通念としての「精神障害者」とはほど遠い存在であり別の呼称が使用されるべきだと思います。厚労省精神疾患の治療を受けている人全てを「精神障害者」と呼んでいるのです。(阿部さんが現在も治療を続けておられるかどうかは承知しておりません)