「碍」とマイクロソフト社
米国のメンタルヘルスへの取組みについては昨日少し触れました。オーマイニュース(インターネット新聞・廃刊)の連載でも書きましたが米国はかなり前から精神保健福祉の分野が大きな政治課題であることを認識し大統領自らがリーダーシップを発揮して、メンタルヘルス分野に思いきった社会資源を投入し今日にいたっています。
少し古いのですがブッシュ大統領は2002年4月29日付で「アメリカは全ての精神疾患を有する米国人を理解し、優れたケアーを提供すると約束する」との声明を発表しています。日本で首相がメンタルヘルス問題に触れたことがあったでしょうか。
現に米国がメンタルヘルス分野に投じた費用は1997年の単年度で約710億ドル(6兆8千億円)でありそのうちの57%3兆9千億円が国費との記録があります。同時に「精神疾患に関る間接的経済損失は年間630億ドル(6兆円)との記述もあります。
このように米国は「経済的ロスを防ぐためにお金を使うのであり元は取れる」と割り切っています。日本は全く逆の思考で「排除」し「適当に保護する」との方針でこれまできています。国は最近になって方向転換を示唆してはいますが国が金欠病に陥っているとの理由で掛け声だけで実行が伴っていません。その根底には世論の後押しが無いという事情もあります。
従い在日本の外資系企業、特に米系企業はメンタルヘルス対策に熱心です。単に精神科医を配置してケアーするだけでなく管理職の研修を徹底して意識の変革に取組んでいます。日本の会社は大企業では産業医を配置している例もありますが機能しているとは言えません。社員が一旦こころのやまいに罹患すると社内では「お荷物」となっているのが現状です。矢張り経営トップの意識の差が出ているのでしょう。
日本のマイクロソフト社のCTO(最高技術責任者)である加治佐俊一氏は一声で「障害者」の表記を「障碍者」に代えてしまいました。「表記を変えるだけでユーザーに喜んでもらえ意識の変革にもつながるのであればお安い御用だ」というわけです。
以下にこれに関する日経トレンデイの記事を転載しておきます。
・・今日はこのへんで。明日は「碍」と障害者権利条約について書いてみます。
大河原克行のこれは“にゅーす”です。
Windows 7でも「障碍者」に配慮、気になるMSの一手 2009年03月16日
Prev Next ところで、マイクロソフトは、広島大学とともに先頃発表したアクセシビリティリーダー育成プログラムに関する会見で、これまで「障害者」としていた表記を「障碍者」に変更することを初めて明らかにした。
広島大学がアクセシビリティリーダーを対象に実施したキャンプでの講習の様子(画像クリックで拡大)
アクセシビリティリーダーとは、障害の有無や、身体的特性などに関わらず、情報やサービス、製品の利便性を享受できる環境を実現する役割を果たす人材だ。同制度で提携関係にある広島大学は、すでに学長名で認定証を交付している。
マイクロソフトが表記を統一する「障碍者」は、戦前までは頻繁に使われていたものだ。戦後の当用漢字の告示以降、一般的には使われなくなった。
「害」という文字には、悪い意味での使い方が多く、支障、災いなどの意味もある。これに対して「碍」には、さまたげるといった意味があるものの、害という言葉に比べて、悪い意味での直接的な印象は薄れる。
マイクロソフトの最高技術責任者(CTO)である加治佐俊一氏は、「害は、害虫などに使われる言葉であり、当社以外でも障害者という表記が、相応しくないという議論がある。『がい』とひらがなで表記することも可能だが、正しい意味を伝えていきたいという考えもあり、『害』という文字を『碍』にシフトしていく」とした。
本気になって、アクセシビテリィに取り組むマイクロソフトだからこそ、障害者という言葉を嫌い、「障碍者」にこだわったのだろう。