tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」と「精神保健医療福祉の改革ビジョン」

日本の障碍者福祉が「ソフト」の面で、「意識」の部分で世界の中で大きく遅れをとっていることは既に述べました。その何よりの証左が法令の未整備(国際基準と乖離している)であることにも触れました。その中でもメンタルヘルス関係の「精神保健福祉」の分野は欧米比で数十年の開きがあるといわれています。


日本政府はこれに気付いていないのでしょうか。そうではありません。国は遅まきながらも5年前に今後日本の精神保健福祉が進むべき方向を指し示す「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(以下「ビジョン」と略)を公表しその成果に関する「研究」も着実に実施しています。


8年前、大阪教育大附属池田小学校の事件を全てのメデイアが総がかりで「精神障碍者」による犯行と大々的に報道したことは記憶に新しいでしょう。結局は「詐病」であり「誤報」であったのですがそのことはあまり知られていません。


事件の発生を聞いた時の小泉首相は「精神障害者」を野放しにするな、早急に対策を検討するようにとの指示を出し、これを受けて坂口厚労相(当時)を本部長とする「精神保健福祉対策本部」が設置されました。全国の識者を集め3分科会を構成し2年余をかけて議論を重ね出来上がったのがこのビジョンであり報告書は2004年9月に小泉首相に手交されました。


そのビジョンの冒頭には基本方針として以下のように記されています。

○「入院医療中心から地域生活中心へ」というその基本的な方策を推し進めていくため、国民各層の意識 の変革や、立ち後れた精神保健医療福祉体系の再編と基盤強化を今後10年間で進める。



「入院医療中心から地域生活中心へ」については少し説明が必要でしょう。日本の精神科病院への入院者数は人口比で世界一です。約32万人の入院者のうち地域での生活に支障のない人達(取敢えず7万2千人)に地域で生活してもらおうというごく当たり前の方針です。これを実行するには地域の理解と支援施設の整備が前提となることも自明です。


出来上がったビジョンの内容は皮肉にも小泉元首相の意図(精神障害者=危険人物の取締り)とは全く逆のものになりました。日本も捨てたものではありません。ビジョンの作成に尽力された委員各位に心からの拍手を送ります。


ビジョンは自治体の役割や地域での支援体制、医療関係の改善点など諸種の問題点を指摘し具体策や数値目標までも設定しており私は高く評価しています。これが確実に「実行」「具体化」されれば欧米にキャッチアップするどころか上回ることすら夢ではないと思います。


さて「碍」とのかかわりです。ビジョンが目指しているのは「10年かけて国民の意識を変革しよう」です。いざ他の施策を実行しようとしても必ず「国民の意識」が眼前に立ちはだかります。矢張り順序としては先ずこれに手をつけるべきだと考えます。世論の支持なしには前進は困難です。急がば廻れです。


ビジョンが発表されて5年が経過しました。10年目標の半ばです。きょうされん「全国共同作業所連絡会」が作成した映画「ふるさとをください」(脚本ジェームス三木)の映写会が全国で600ヶ所を上回っており徐々に階層を越えた国民の関心が高まりつつあります。この映画は「精神障碍」をテーマにした劇映画で芦屋市でも昨年11月に幣NPO法人と芦屋市社会福祉協議会の共催で映写し芦屋市職員や教育関係者を含む550名の一般市民の方々に観てもらい好評でした。


この映写会で「精神障害」の呼称についてアンケートを実施しましたが結果は「不適当で改称が必要」が66%「心的障碍」の支持者は68%でした。


このように「民」では動きが出ていますが矢張り「官」による主導が効果的です。草の根運動は時間がかかります。ビジョンでは「メデイアの活用」も進言していますが「官」が動いている形跡はありません。何よりもこのビジョンの存在そのものすら国民は知らないのが実情でしょう。普及・啓発をつうじての国民の意識の変革には「官」の主導の下官民が連携して取組むことがスピードアップにつながると思います。普及啓発には大した費用はかかりません。要はその重要性に気付くかどうか、意識を持つかどうかです。


先ずは文化庁が率先して「碍」を常用漢字に追加し、厚労省が「障害保健福祉部」を「障碍保健福祉部」に改称し、そして外務省も「障碍者権利条約」と邦訳しましょう。余り時間はありません。スピードが必要です。「隗より始めよ」です。



今日はこのへんで。明日は文化庁に提出したパブリックコメントについて書きます。