「碍」と「みんなげんき倶楽部」(2)
心的障碍者(精神障害者)を身内にもつ家族のあつまりである「芦屋家族会」は10年まえに「精神障害者」という呼称・表記に疑問をもち、その代替呼称・表記の必要性をうったえてきました。この活動は同家族会が主導し2005年に設立した自立支援法下の地域活動支援センターⅠ型(旧地域生活支援センター)を運営するNPO法人芦屋メンタルサポートセンターに引継がれ今日にいたっています。
「精神障害者」の代替表記の議論のなかで「障害」の「害」の字にひっかかり調べたところ丸山一郎先生の小論文に遭遇しました。(丸山一郎先生については別稿に詳述しています)戦前使用されていた「碍」が昭和21年に制定された当用漢字から脱落し同音の「害」が転用され27年まえみなおした常用漢字でもみすごされ今日にいたっているということでした。
今年になり27年ぶりの常用漢字みなおしが発表されチャンス到来です。3月のパブコメ公募の公表をまちかねて「碍」を追加するよう意見書を提出しました。結果は「鷹」についで2位にランクされ、てごたえを感じました。(これも別稿に詳述)
その後、加藤秀俊先生の産経新聞「正論」欄での応援論述もあって市井で議論がもりあがり国語審議会も「碍」を無碍には没にできない状態となっている模様です。
このような経緯・背景のもとでひらかれた「みんなげんき倶楽部」の第1回オフの会(発会式11月20日)の場で芦屋の会員から予想される「改訂常用漢字表試案への意見」に応募することを提案し全員の同意をえた次第です。
以下にみんなげんき倶楽部として文化庁あてに提出した意見書を掲載します。これが倶楽部の初活動となりました。文案は会員がネット上で協議し作成したものです。
平成21年12月6日
文化審議会国語分科会様
みんなげんき倶楽部
代表幹事 柏木 彰
「改定常用漢字表試案についての意見」
冠省 「改定常用漢字表」に関する貴試案には追加字種のなかに「碍」が入っておりません。下記の理由から是非とも追加字種としてとりあげていただきたくご提案申し上げます。
1.昨今、「障害者」という表記を法令用語などを除いて「障がい者」に書き換える動きが全国で広がっています。
地方自治体では北海道を初めとして岩手、山形、福島、三重、大分、熊本、宮崎の各県で実施されており、政党においても民主党、公明党が党の方針として「障害者」を「障がい者」と表記すると明言し、広報媒体などですでに実施されております。
2.民主党本部に確認したところでは、今後は議会に提出する障碍者関連の法案にも適用していくとのことでした。政権政党である民主党が率先して「障がい者」という表記を推し進めれば今後各地方自治体をはじめマスコミなど多くの分野で「交ぜ書き」の雪崩現象が起きることが予想され、「障害」/「障がい」・「障害者」/「障がい者」の表記が入り乱れいたずらな混乱が必至です。
3.「障害者」とは「障害をもつ人」であって「人に害を与える人」・「社会にとって妨げとなる人達」と考えるのは常識はずれで論外だと決めつけられるのは「障碍」とは全く無縁の人達であり、障碍手帳に印字された「障害」の文字にこころを傷め、「障害者相談窓口」の案内表示に身が縮む思いをする「障碍をもつ人達」が大勢いることも事実であり、上記の「交ぜ書き」は
この「害」の違和感を変えたいという意識の表れだといえます。
(*平成21年度版障碍白書によると身体障碍者366万人、知的障碍者55万人、精神障碍者303万人)
4.しかし、「障がい」/「障がい者」などの「交ぜ書き」の濫用は本来の「障碍」/「障碍をもつ人」という意味を薄れさせる惧れがあり決して好ましくありません。
5.わが国も2007年に「障碍者権利条約」に署名し、やがて批准を迫られています。この条約は21世紀で初の人権条約といわれており、世界の注目するところです。世界(とくに、漢字圏の国々の中で)に恥じない正しい表記が求められています。そのためにも「碍」の新常用漢字表への追加を提案したします。
敬具
追伸: 「みんなげんき倶楽部」は遅れている日本の精神保健福祉の増進を目指す良識者のグループです。とくに、人々の間にいまなお根強くある精神疾患や精神障碍者についてのスティグマの除去を主要課題とし、必要に応じ国及び関係者に適切な提案・助言をおこなうことを旨としています。
以上