tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」とシンポジウムの報告書(記録)

2月20日に「障碍」の表記をめぐるシンポジウムが開催されたことは先に書きました。

「障碍」の表記問題は3月19日開催予定の第5回推進会議で議論されることが決まっています。

シンポの主催者であるNPO地域精神保健福祉機構が作成した報告書を以下に掲載します。

少し長文ですが関心のあるかたはご覧ください。



「障害者」から「障碍者」へ。さらに・・
〜「精神障害者」の呼称と表記を考えるシンポジウム〜


                                                           2010(平成22)年3月3日
                                                           NPO法人地域精神保健福祉機構


【概要】

日時: 2010年2月20日(土)午後2時半〜5時

場所: 都市センターホテル「コスモスホールⅡ」(東京都千代田区平河町

主催: NPO法人地域精神保健福祉機構(代表理事 大島 巌)

参加者数:145名(一般・公務員・障碍当事者・医療・福祉関係者・その他)

司会者:高橋清久  精神・神経科学振興財団理事長/藍野大学学長
          国立精神・神経センター名誉総長

パネリスト−1 豊田徳治郎  芦屋家族会会長
               NPO芦屋メンタルサポートセンター副理事長

パネリスト−2 増川信浩   WRAPファシリテーター 障碍当事者


パネリスト−3 當山日出男   立命館大学衣笠総合研究機構客員研究員
               文字研究会代表 黄檗宗王龍寺住職

パネリスト−4 佐藤光源   東北福祉大学大学院教授
               元・日本精神神経学会理事長


【発表要旨】

司会の高橋清久氏の「私の娘は統合失調症ですとは言えるが精神障害者ですとは言えません」という人がいますが今日は 「しょうがい」の表記問題とともにこのことも考えましょうとの発言でスタートしました。

 続いてパネリストより各々20分の意見発表がありました。


 豊田徳治郎氏 「精神障害」関係者こそ、呼称と表記にこだわろう

(1)「障害者」「精神障害者」の呼称・表記に関心を持った経緯
  15年前の長男の統合失調症発症・ソウルでの体験

(2)「障害者」表記の「障碍者」への変更を唱える3つの理由
 
 1.誤りは正すべき。「障害」は「障碍」の誤用
 
 2.障碍に対する国民の意識変革のきっかけにしたい
 
 3.「障害者権利条約」の表記そのものが条約の主旨に反する

(3)「精神障害者」の呼称・表記の改善を訴える3つの理由

 1.「犯罪」「不祥事」とセットで報道され実像との乖離が大
 
  2.地域移行に際し復帰施設の立地や住居確保を容易にする
 
3.ソフトな表現にして雇用主や周辺の理解を得、雇用を促進

(4)今後の見通し

1.「障がい者制度改革推進会議」での議論に期待。「障害」と同時に「精神障害者」  の呼称・表記についても討議を

2.「痴呆症」→「認知症」と同様に政府主導で公募による即決を期待

3.芦屋市では「心的障碍」を試用中。

* 詳細は添付の発言原稿を参照願います。

増川信浩氏  「精神障害者」「当事者」「コンシューマー」〜呼称をめぐる当事者アンケートから〜

 WRAP( Wellness Recovery Action Plan)=元気回復行動プラン

(1)全国各地の障碍当事者455人を対象に実施したアンケートの結果呼ばれたくない呼称の第1位が「精神病者」2位は「精神障害者」で1位2位合わせると対象 者の過半数であった。

(2)呼ばれたい呼称の1位は「自分の名前」2位は「当事者」であった。

(3)以上当事者の気持を尊重してほしい。
 
*その他は添付資料を参照願います。

當山日出男氏 「碍」の字と改定常用漢字表試案

(1)経歴 慶大院卒 専門は日本語学(訓点語学・文字・表記)

(2)歴史 当用漢字→常用漢字→改定常用漢字試案(審議中)

(3)改定常用漢字表は漢字使用の「目安」であり個々の事情に応じて適切
な考慮を加える余地があるものである。

(4)「碍」は現状では使用頻度が少ないので追加字種の候補になっていな
いが追加しておくべきと考える。

(5)外資系のマイクロソフト社が「障碍者」表記に踏み切り先導している
ことは注目すべきである。

(6)「碍」は使用が禁じられているわけではないのでどんどん使えばよい。


佐藤光源氏  呼称と表記の変更は精神医学をどう変えるか?〜統合失調症への呼称変更の経験から〜

(1)病名「精神分裂病」の「統合失調症」への呼称変更は1993年に患者の家族会の団体 である全家連の提案を受けて2002年の日本精神神経学会で承認され確定した

(2)新呼称は瞬く間に広がり2003年時点での全国普及率は77.7%に達し現在は100%に 近いと推定される

(3)呼称変更による波及効果は大きく患者に病名を伝えやすくなり病気に対する知識の 普及、更には遅れている日本の精神保健福祉の前進にも資すると予想される

(4)精神保健福祉法の「障害」の規定は「精神疾患は生活を送る上での能力が相当程度  影響を受けている状態」を言い他方、障害者基本法・自立支援法では「障害者と  は、障害のために長期にわたり日常生活や社会生活に相当の制限を受ける人」と  規定されている。(疾病と障害の併存)
  disease,disorder(精神障害)=disability(生活能力制限)

(5)「障害」は疾病を、「障碍」は生活機能制限を反映するものとし、疾病と障碍の併  存を認める基本理念は変えない

* 添付のパワーポイント資料を参照願います


【指定発言】

岩崎達也氏 佐賀県 健康福祉本部 障害福祉課 副課長

2月16日の定例記者会見で、古川康知事は、「障害」の表記を見直す際には「障碍」を候補に入れるよう政府の障がい者制度改革 推 進本部に要望すると発表しました。「文化審議会」にも「碍」の字を常用漢字に追加するよう働きかけます。

古川知事は、「害」には抵抗があり、「がい」も漢字文化の点でおかしいということ で、個人的な文章では数年前から「碍」を使用 しています。
発表に先立ち佐賀県で実施したアンケートでは約8割の人が「障碍」表記への変更の動きに賛成であり回答者全体の4割超の人が変更されれば使用すると答えています。(2月25日に古川知事は福島瑞穂大臣(推進会議副本部長)を訪ね申し入れを実施)


【特別発言】

 大島巌氏 NPO地域精神保健福祉機構 代表理事
      日本社会事業大学 教授

 people with mental illness の mental illness を「精神障碍」とするのか、「肝 機能障害」「腎機能障害」も同様か、ですね。

むしろ「障害者」「精神障害者」と人と繋げて、人格と関わる呼び方にしてしまう ことが、より大きな問題と私は考えています。

英語では、the mentally disabled,schizophrenicsがpeople with・・・に変化して きた歴史があります。

精神障害をもつ(のある)人たち」と「精神障碍」をもつ(のある)人たち」の 両者の違いに、どれくらい大きな社会的「意 味」の違い、イメージの違いがあ るかを、問う必要があるでしょう。

 いずれも「障害」や「障碍」が対象化されていて、その人の人格から分離されてい ます。「害」を与える人というイメージは少なくなるように思います。
 
 「障碍」には大きな岩の前に立ち尽くすというイメージがあるそうです。

 ICF(国際機能生活分類)の「参加」の制約、「社会的不利」レベルの問題に使用し たら良いのかも知れません。

 「障害」は(ICFの)機能障害や、病気の意味で使用し分けても良いのだろうと思い ます。

 〇〇障害をもつ(のある)人たちはそのような使い分けに使用することができるか も知れません。


【シンポジウムでのアンケート分析結果】
 当シンポジウムへの参加者145名を対象にアンケートを実施し60名より回答を得まし た。

(1)参加者145名の内訳は特定できませんが一般市民、公務員、医療・福祉関係者のほ  か多数の障碍当事者が含まれていたことが推測できます。
 
(2)「障害者」の代替表記として全回答者60名中30名(50%)が「障碍者」を選択し  ました。「障がい者」を選んだ人が8名(13%)「チャレンジド」も8名(13%)  でした。その他が14名23%でした。
 
(3)「精神障害者」という呼称・表記を「変えるべき」と答えた人は60名中50名    (78%)でした。
 
(4)「精神障害者」の代替呼称としては20名の人が「心的障碍者」に〇をつけまし   た。
 
(5)その他の意見として「一つに決める必要がない」「変えるべきだが思いつかな   い」「ショウガイシャの呼称そのものを変えるべし」「心的疾患やストレス障碍  でどうか」といった意見がありました。

  *詳細はアンケート集計結果を参照願います。


【まとめ】

呼称・表記問題は地味であり参加者数が心配されましたが、案に相違して全国各地から多数の障碍当事者を含む各層から145名の  参加があり、フロアとの意見交換も活発に行われ、有意義でした。

医療モデルとして「障害」、社会モデルとして「障碍」と使い分けるかどうかは、今後議論が必要と思われます。

フロアからの意見や諸種アンケート結果を総合しますと、民意は現行の「障害」の表記は不適当であると結論づけてよいと思います。代替表記としては「障碍」表記を支持する人が多数おられました。さらには精神障碍当事者の多くが、「精神障害者」と呼ばれることに否定的であることも判明しました。

新政権により昨年末に障がい者制度改革推進会議が発足し、その会議で「障害」の表記が議論されることが決まっています。その折に「精神障害者」の呼称・表記の問題も併せて議論されることを期待します。その際、この報告書が参考になれば幸いで す。

フロアとのやりとりの中で話題となった「障碍の規定・定義」もこの際、推進会議で議論し結論を得ていただきたいものです。遅れている日本の精神保健福祉の画期的前進を図るには不備であるエビデンスを揃える作業から始めなければなりません。今こそ同時並行して一般市民を対象とした普及啓発活動が肝要です。市民の理解なしには、そして世論の支持なしには前進は期待できません。

古来「名は体を表す」と言います。西洋でも「Names and nature do often agree」として呼称や表記を大切にしています。まし  てや表意文字を持つ日本は漢字を大事にする必要があります。呼称・表記の変更が気分を一新し広く市民の理解を得ながら精神保健福祉を大きく前進させるきっかけになれば幸いです。

                                                                         以上


■事務局
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