tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」と推進会議-4

3月19日の第5回推進会議で「しょうがい」の表記が議題となりました。そのなかで石偏の「碍」の字が大きくとりあげられ議論の対象になりました。おそらくこの「碍」の字が公の会議の場に現れたのは初めてだとおもいます。その意味で2010年3月19日は記念すべき日となるでしょう。と同時に「障碍」の表記が議論されたのもはじめてのこととおもいます。


なにぶんこの「碍」の字は戦後すぐに常用漢字からはずれたことや熟語が少ないこともあって高年者にすらなじみがうすく読めない人が多いのが現状です。その意味となると一部の知識層を除いて知らない人がほとんどです。この現状を踏まえると推進会議の委員の発言が消極的になるのももっともだとおもわれます。


そのなかにあって佐藤久夫委員(日本社会事業大学教授)の発言は実に的確でした。「碍」の元字が「礙」であること、その意味が「旅人が道をふさいでいる大きな石の前で立ち止まってどうしたらよいか考え込んでいる姿」であること、したがい、その石が「障碍物」であり旅人が「障碍者」であるとの説明は説得力があります。「環境の障壁を前に立ち止まっているとの意味は、現実を反映しており、また障碍者権利条約やICFの視点からしても適切な表現」と記しておられます。「礙」の意味は10年ほど前に香港で大学助教授から説明を受けたとのことですがこのような国際的視点・感覚こそが不可欠でしょう。同じ漢字圏の中で日本だけが「障碍」→「障害」の誤用を看過するわけにはいかないとおもいます。誤用は直ちに正されてしかるべきです。チャレンジドを和訳するとすれば「障碍者」こそが適訳だとおもいます。「障害者」を英訳すればpersons with harmとなるのではと危惧します。


佐藤委員は「しょうがい」の表記は時間を掛けて国民みんなで議論すべきだとも発言されています。広く国民の間で議論すること自体に大きな意味があります。議論を通じて障碍への関心が高まり障碍についての正しい知識の普及と理解が広まると考えられるからです。「しょうがい」の表記は障害者のみが使用する専門用語ではなくむしろはるかに多くの国民が日常的に使用する言葉です。東室長も総括されていましたがこれは国際条約や法令にも使用される用語であり局部の議論で結論を出す性質のものではありません。


竹下義樹委員(日本盲人会連合会副会長)は「少なくとも直ちに(害)の字は全ての法令から廃止し、「障碍」にするか「障がい」とすべきである」との意見を出されています。


それにしても委員の間に「害」のままでよしとする消極論が多かったのには驚きました。「碍」の意味を説明した上での諸種のアンケート調査では「そういうことであれば変更が好ましい」という意見が過半を占めているのですが。果たして団体の代表者が障碍当事者の真の意向を代弁しておられるのかどうか疑問に感じました。もっとも最近団体の組織率は低下しており実会員は5%未満とも仄聞していますが。


現実には既に10の府県と5つの政令指定都市が「障害」表記は不適当として「障がい」との表記を採用しています。更には無数の市町が同様に「障がい」と表記しています。推進会議の委員のみなさんはこの事実をどのように理解しておられるのでしょうか。自治体が勝手に変更したとは到底考えられず民意を汲んでの変更と推定します。この善意による変更を推進会議で「要らぬお世話だ」「名前だけ変えてごまかそうとしている」として一蹴していいのでしょうか。これでは障碍者福祉の前進は望むべくもないでしょう。
既にハード面で高水準にある身体障碍関係は良いかもしれませんが半世紀遅れているといわれている精神保健福祉分野は世論の理解と支援なしには画期的進捗は期待薄です。


精神分裂病」という呼称・表記が「統合失調症」に変更され関係者や一般市民もこれを一歩前進として評価していることは周知の事実です。この変更を契機にして精神保健福祉の前進に必死に取組んでいる人たちが多数おられます。このような客観的事実を無視し水を差すような消極的発言が委員の口から出るのは感心しません。おもうように前に進まないいらだちは理解できますが。


表記の変更に関して迷っておられる委員が多数おられます。それらの委員のみなさまにはぜひこの問題の背景やこれまでの経緯をご理解いただいたうえで冷静な判断をされるよう希望します。


「変ったね」といわれるような推進会議にしてほしいと鳩山本部長から要望が出ています。「碍」の字くらいは少し努力すれば覚えることは可能だとおもいます。さして難しい漢字でもありません。まずは「しょうがい」の表記を変えることからはじめては如何でしょうか。これすらも変えられないようでは推進会議の前途も多難と言わざるをえません。