tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

碍」と文化庁あて意見

国民の間には常用漢字へ「碍」の字を追加してほしいとの要望が多く昨秋募集されたパブリックコメントに対し86件の意見書が提出されています。この86件の意見書の一通の全文を作成者より匿名を条件に提供を受けましたので以下に掲載します。「碍」の意味も含め問題点が的確に指摘されていると思います。


【改定常用漢字表試案への意見】


意見:「碍」の字を改定常用漢字表(以下「本表」という。)に追加すべきで ある。また、これに関連し昭和31年の旧国語審議会報告「同音の漢字による書き かえ」(以下「書きかえ」という。)に対する現在の文化庁としての考え方を明 らかにすると共に「書きかえ」で挙げられている用例の一部については撤回ないし失効確認を行うべきである。

(理由)

 まず、小委員会では大多数の委員が使用頻度の低さを理由に「碍」の本表への 追加を拒否する意見を表明しているが、第24回小委員会の資料「漢字出現頻度数 順位対照表(Ver.1.3)」によれば「碍」は 3461位であり、さらに使用頻度の低 い常用漢字(本表で除外候補とされている字種を含む。)も存在することから現 状でもそれらの字種に比べて圧倒的に使用頻度が劣るとは言えないことが確認さ れる。また、教育漢字・学年別漢字配当表では小学4年生に配当されている 「得」との字形の相似を考えれば決して学習困難な文字ではないし、JIS第1水準 漢字にも登録されているため電子計算機上での入力に際しても不都合は生じないものと考えられる。
 

また、小委員会においては熟語として「碍子」「融通無碍」ぐらいしか存在し ない、との意見が挙がっているが「書きかえ」で「害」への置換が指示されてい る「妨碍」もあり、また電気工学の分野では「碍子」だけでなく「碍管」「碍 壁」など配線や部品が互いに干渉しないよう防護・固定する様々な形状の絶縁体 の名称に「碍」が用いられている。パナソニック創業者・松下幸之助が創業直 後、考案した二股ソケットが売れず腐心していた所に扇風機の配線を固定する部 品である「碍盤」を大量受注し経営を軌道に乗せた逸話も広く知られているとこ ろである。


 次に、人権・福祉の観点より「碍」を追加すべき理由を述べる。「碍」(呉音「ゲ」・漢音「ガイ」)は、正字が「礙」と書くことからもわかるように「石を 疑う」、すなわち「道を塞ぐ石を前に思案する」状態を意味する。従って「障」 がそうであるのと同様に「バリアフリー」の「バリア」を意味する文字であり、 その意味自体は至って中立的なものであると評価される。「障碍」は元来、呉音 で「ショウゲ」と読み、これは仏教用語で「悟りを開くために乗り越えなければ ならない試練」を意味し、英語で「神に与えられた試練」の意味より派生した 「challenged」の意訳としても適切であると評価される。


 対して「害」(呉音 「ガイ」・漢音「カイ」)は「碍」には無い「積極的に災いをもたらす主体」の意味を有する。そもそも「碍」と「害」が同音であるのは漢字文化圏の中でも呉音と唐音が混同された日本のみであり中国及び台湾、韓国では「碍」と「害」は 発音が異なり代用字たり得ない。一例を挙げると「書きかえ」では「妨碍→妨 害」の置換が指示されているが、中国語では「妨碍」は「進路に物を置いて通行 を妨げる」のに対し「妨害」は「進路に立ちはだかって通ろうとする者に危害を 加える」と、それぞれ似て非なる意味を持つ熟語として並存しているところである。


 古来より存在した「障碍」に対し、現在使用されている「障害」は明治期に英 単語「disorder」の訳語として考案され、主に医学用語として用いられていたと 見られているが、大正期には既に両者の混同が相当に進んでいたと見られ、大正 8年の文部省普通学務局「漢字整理案」から昭和20年制定の当用漢字表まで一貫 して「碍」を排斥し「障碍」を「障害」に一本化する人権感覚を著しく欠いた動 きが行政の主導で進められると共に「書きかえ」で「障碍→障害(法)」と法文 上において「障碍」表記を事実上禁止し差別性の強い「障害」への置換を指示したことは、当用漢字表が現在でこそ撤回された「将来の漢字全廃への布石」とし ての強制性を有していたことと併せてそれ自体が不幸な歴史と言わざるを得ない ものである。


日本以外の漢字文化圏における「障害者」に相当する単語は、中国 では「残疾人」、台湾では「障礙人」、韓国では「障碍人」であり、この中で 「障碍人」は近年の国際交流の中で日本においても目にする頻度が高まっている ことは注目に値する。いずれの国・地域においても、日本特有の「障害」なる表 現は現在に至るまで使用されず、全て「障碍」が用いられているところである。日本における「障碍者」の古い使用例としては大正13年に刊行された樋口長市 「欧米の特殊教育」で「視覚/聴覚/言語障碍者」が使用されており、昭和22年制 定の地方自治法で「身体障害者」が使用されるよりも以前から「障碍者」の表現 が存在したことが確認される。


 こうして当用漢字表と「書きかえ」により半ば強制された「障害」の差別性を 問題視する動きは、平成14年に東京都多摩市が交ぜ書きの「障がい」を採用する に至り、以後も交ぜ書きの「障がい」を採用する自治体は増加を続けているが、 その多くは「碍」は常用漢字ではないので使えないことを理由に挙げている。


 しかしながら、交ぜ書きについてはかねてより批判が多く、現在の常用漢字表 制定に際しても交ぜ書きを減らして行く方針の下に制定されたものであることを 考えると、こうした人権・福祉に関わる理由での交ぜ書き発生は従来では想定さ れていなかったものであり、本来ならば国語分科会のみならず厚生労働省の用語 検討会や内閣府障がい者制度改革推進本部、外務省国際法局条約課を交えて議論すべき性質のものであると考えられる。


 本年12月に設置された障がい者制度改 革推進本部では法文における「障害」表現の見直しも課題に挙げられており、まず「害」の使用を回避する観点より交ぜ書きの「障がい」を名称に用いているが、これは交ぜ書きの採用を最終確定させることを前提とした意味での命名では ない。同様に、交ぜ書きの「障がい」採用に際して「碍」は常用漢字ではないので使えないことを理由に挙げている地方自治体の多くは「碍」が常用漢字であれ ば「障碍」とするのが望ましいと考えているとも取れる。


 このように、一般国民の間では「害」に対する忌避感が確実に強まっており、対して交ぜ書きの「障がい」に対しても同様に違和
感を抱く意見が相当数にのぼ ることを考えると「碍」の本表への追加を認めて「障害」「障碍」「障がい」、或いは英語の「Challenged」のような全く新しい単語を創造するかのいずれを是 とするかについて一般国民の意見を幅広く求め、その選択に委ねることが現状では最も理に適った判断ではないかと考えられる。そうした状況において、小委員会が「碍」の本表への追加を拒否することは過去に使用事例が有り当然に有力な候補と成り得る単語を不当に排除することと同義であり、人権・福祉に対する配 慮を著しく欠いた「書きかえ」の轍を踏むことになりかねない。


 小委員会では「障害者」団体当事者からの追加要望が存在しない、との反対理由が挙げられているが、事は「障害者」であるか否かに関わらず日本語を使用する全ての一般国民に関わる問題であり、このような認識は視野狭窄もはなはだし いと言わざるを得ない。近年では「精神分裂病」が「統合失調症」に、また「痴 呆症」が「認知症」にそれぞれ用語が変更されているが、いずれも学会における 問題提起や提案が用語変更の発端となっており必ずしも「当事者」の発議によるものではなく「障害者」ではない一般国民の立場からも「障害」の「害」を問題 視する意見は当然に存在することを認識すべきである。また、委員が想定してい る「当事者」について指摘するならば、団体名や定款に「障碍」を使用している 特定非営利活動法人は本年12月現在で48法人が存在し、その数は現在も漸増を続 けている。また、民間企業ではコクヨマイクロソフトが社内文書について「障 碍」を採用しており、今後も「障碍」という表現を再評価する動きは確実に高ま るものと予想されるところである。


 こうした民間の動きに対しては「碍」も 「害」ほどではないが決して良い意味の文字ではない、との批判もあるが前述の 通り、日本以外の漢字文化圏では差別性を含むこと無く「障碍」が使用されており、また「碍子」を始め電気工学の分野でこの字が用いられる場合も「碍子」が そうであるのと同様にその意味は中立的であり「危害」「害悪」「害毒」などの 「害」と比して差別性を含むものでないことは明らかである。


 法文においては、当用漢字表制定後の昭和22年制定の地方自治法第252条の19 において「身体障害者」の表現が初めて用いられ昭和24年には身体障害者福祉法 が制定されているが、昭和4年制定の救護法(昭和21年廃止)では第1条4項に 「身体ノ障碍ニ因リ労務ヲ行フニ故障アル者」との表現が見られるし、現行法で は手形法(昭和7年制定)第54条や小切手法(昭和8年制定)第47条で「障碍(国 ノ法令ニ依ル禁制其ノ他ノ不可抗力)」が使用されている。また、地方自治法と 同じ昭和22年制定の事業附属寄宿舎規程では第17条に「九 各段より高さ一・七 メートル以内に障碍物がないこと。」との条文が見出される。


 国際条約では、平成18年に国連総会で採択された「Convention on the Rights of Persons withDisabilities」は外務省の仮約における表題が「障害者の権利 に関する条約」とされているが、国連公用語の一つである中国語正文における表題は「残疾人権利国際公約」、また韓国で批准作業が進められている外交通商部 の韓国語公式訳では「国際障碍人権利条約」が訳題として用いられており、両公式訳とも外務省の日本語仮訳で「障害」と訳されている箇所については「障碍」 が用いられている。今後、国外より外務省の仮約において用いられている「障 害」の「害」はいかなる意味かを問われると共に「害」の使用は「Persons withDisabilities」の「権利及び尊厳を保護・促進」(前文(y)、外務省仮訳)する ことを目的とした条約の趣旨に反する表現ではないかとの批判も当然に予想され得ることを考えると、公式訳の確定作業に際しては「障害」ないし「障がい」が 日本のみでしか用いられていないのに対し、当用漢字表制定までは日本でも共通 して用いられていた「障碍」は他の漢字文化圏で現在も幅広く用いられていることに加え、熟語の意味合いとしても英語の「challenged」に通じるため「障碍」 を採用することが最も理に適っていると考えられる。


 中国及び韓国政府は日本に おける条約の批准作業、とりわけ公式の日本語訳で用いられる表現についても注 視しており、小委員会委員一同は日本で用いられている「障害」という用字が日 本以外の漢字文化圏において強い違和感を抱かせることにより生じる損失に対して、特に注意を払うべきである。  


 最後に、当用漢字表と共に「障碍」を駆逐する原因となった「書きかえ」に対 する意見を述べる。「書きかえ」で置換が指示されている熟語の内「研磨→研摩」や「妄動→盲動」などは「磨」「妄」が常用漢字に追加されたため事実上、 失効しているが本表の制定時には「毀損→棄損」「潰滅→壊滅」などもこれに加わるのが確実である。このことは、同一ないし近似の意味を持つ熟語に関しては古来の表記と「書きかえ」で指示された表記の並存を認めることと同義であり「障碍」についても「障害」ないし「障がい」との並存を認めない理由は無いと考え られる。


 こうした状勢の変化を受けて「書きかえ」において置換が指示されてい る用例のうち現在は事実上、失効しているものについては該当箇所の部分撤回ないし失効確認を行うと共に、文化庁においては「書きかえ」が「障碍」を事実上 否定し差別性の強い「障害」表記を半強制的に広めたことに関して総括を行うべ きである。また、現行の法文上は交ぜ書きされている「けん銃」や「閉そく」も本表の制定後に「拳銃」「閉塞」と交ぜ書きを脱する表現に改められることが予 想されるが「障碍」ないし「障がい」に関しては政府が依然「障害」を使用し続 けているため、交ぜ書きの「障がい」を採用している地方自治体においては「障 がい者のための障害者手帳」のようなパッチワーク文が生じるなど、一種の混乱した状況となっている。こうした状況は早期に是正されることが望ましく、文化 庁は出来得る限り早期に障がい者制度改革推進本部や厚生労働省の用語検討会、外務省国際法局条約課と共に法文上の「障害」に代わる表記について、一般国民 を交えた幅広い議論を提起すべきである。


 以上の理由に基づき、国語分科会の委員諸賢が良識を発揮し「碍」を本表に追 加すべきであるとの判断を下されるよう、一般国民を代表して強く要望する。