「碍」と文科省資料
4月13日に開催された漢字小委員会で配布された資料4を拝見しました。
「要望の多かった玻・碍・鷹の扱いについて」と題したその資料は全て碍について記述されています。
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http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/bunkasingi/kanji_41/pdf/shiryo4.pdf
10ページに【法律における「障害者」等の使用例】が記載されていますが、不思議なのは当用漢字が昭和21年11月に告示されそれ以降は「障碍」の使用が禁じられていたにもかかわらず、それ以降の「障害」の使用例が多数挙げられていることです。
文部省は当用漢字の制定にあたり従来の「障碍」を「障害」に書き換えるよう指導したわけですから昭和21年11月以降の法律の表記は「障害」となっていて当たり前だと思うのですが。なぜこのような例示がなされているか怪訝に思っています。
当用漢字制定以前に法律に使用された例は昭和19年の厚生年金保険法中の「「障害年金及障害手当金」のみであり、これも対象が人ではなく「障害年金」で無理があります。それも戦争中の混乱期に制定された法律です。
他方、人に対する「障碍」の使用例は多数あるにもかかわらず昭和4年の救護法の1例しか挙げられていません。お上の無謬性主張の証左であり意図的に作成された資料といわざるを得ません。
4月21日の国会で川端文科相が答弁されたように新常用漢字表は現状を反映し将来を見据えた改定であるべきなのにまさに温故知旧の見本です。
戦前の法律に事物を対象とした「障碍」「障害」の表記例はあっても人を対象とした「障碍者」の表記例が皆無なのは「障碍者」という概念や言葉自体が戦後に生まれたものだからと推察されます。戦中・戦後の傷痍軍人への福祉の必要性から派生した言葉と言えるでしょう。
そうであれば、当用漢字は戦後すぐに(昭和21年)制定されたわけですから、「障碍者」と表記したくとも「障害者」と表記せざるを得なかったことが容易に想像されます。
背後に何が何でも「障碍者」を排除し「障害者」表記を正当化しようとする動きが一部の障碍団体の中にすらあるのは奇異な感じがしています。