tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」と内閣府(推進本部)の基本姿勢

「碍」の常用漢字への追加をめぐっては、文科省の手を離れて内閣府へ移管されたことにより、ひょっとして明るい展望が期待できるのではと思われましたが、文科省以上に追加に否定的な空気が漂っていると感じています。


「碍」の字がなぜこれほどまでにお役人さんに嫌われるのか、未だその理由が不明ですが、その前兆は5月10日の第10回障がい者制度改革推進会議での齋藤企画官による冒頭説明にあったように思われます。


この日、初めて「障がいの表記」が議論されるにあたり、冒頭、内閣府の齋藤企画官より推進会議の全委員に対し以下のような説明が行われました。読んでいただければ自明ですが明らかに「碍」を何としても排除したいという姿勢がありありと窺えます。とても中立とは程遠いスタンスです。ましてや「改革」の意気込みは微塵も感じられません。


以下推進会議の議事録よりの抜粋です。フレーズ毎に豊田のコメントを挿入しました。


内閣府(齊藤企画官) それでは、説明をさせていただきいと思います。
お手元に資料5を配付してございます。それに基づきまして、3月19日の会議以降の動き、内閣府において実施いたしましたアンケート調査の結果などにつきまして御説明いたします。
まず初めに1ページ目のスケジュールをごらんください。
4月23日の文化審議会国語分科会漢字小委員会の会合におきまして、改定常用漢字表の答申案の素案が「碍」を含めない形で了承されたところでございます。


豊田記:冒頭で「文科省は(碍)を追加しない」との大方針を強調し機先を制しています。


今後は5月中旬の国語分科会の答申案決定を経て、6月上旬ごろの文化審議会において答申を決定する予定と聞いてございます。
その答申案(素案)の具体的な内容でございますが、資料の2ページ目をごらんください。既にお目通しをいただいておることと存じますので、該当部分の朗読は省略させていただきますが、一番下の段落でございます。結論といたしまして「碍」の取扱いについては、推進本部、つまりはこの推進会議における検討の結果に委ねられている格好となってございます。


豊田記:「推進会議における検討の結果にゆだねられている」とは本音でしょうか。そうだとすれば「碍」の常用漢字への追加問題     は「しょうがい」の表記の問題と完全にリンクされていることになります。


そこで問題となってくるのが、この答申案(素案)に込められた意味でございます。資料の3ページ目以降に4月13日の漢字小委員会の議事録及び配付資料の抜粋を添付してございますので、要点だけを御説明させていただきたいと思います。出現頻度や造語力、単語の構成力などの字種選定基準に照らすと「碍」は入らないというのが漢字小委員会の議論の前提でございます。その上で何か特別な事情はないかということがこの委員会で検討されております。


豊田記:「字種選定基準」に照らして失格ということですが、この「字種選定基準」を開示していただきたいと思っています。出現    頻度については何時の時点でのデータなのか、データの信頼度も含めて知りたいところです。今回追加される196字がこ    の基準を全て満たしているかどうかも確認が欲しいと思います。出現頻度については文科省が1956年に「障碍」から     「障害」への書き換えを広く国民に指導した経緯もあり、その書き換えられた「害」の出現頻度をカウントすれば全く問題    ないはずです。(字種選定基準関連については国会で質疑をしていただきたいものです)


そのため、まずは二度の意見募集に寄せられた意見について事実関係を検証してございます。その結果、大別して3つに整理できる意見のうち1つ目ですが、戦前は「障碍」を使っていたので、本来の表記に戻すべきであるとの意見。


豊田記:戦前は「障碍」と「障害」が混在・混用されていたのが事実であり、しかも「害」が人に対して「障害者」として使用され    た事例は希少だと思われます。「障碍」表記支持者の主張は「人を殺める」という意味を持つ「害」を人に対して使用する    のは不適切であり「誤用」とも言えるのでこれを正してもらいたいというものです。従い戦前の使用がどうであったかは議    論の本筋ではありません。


2つ目ですが、戦前は「障碍者」を使っていたという意見につきましては、精査の結果、いずれも事実に反する部分があるのではいなかということになってございます。


豊田記:そのような意見があったかもしれませんが、それは主たる意見ではなくここで特記するような意見ではありません。的外れ    のコメントだと思います。「障碍者」という概念が出現したのは戦後であると言われています。



3つ目ですが「障碍」と「障害」では意味が違う。「障害」は悪い意味だが「障碍」はそんなに悪くはないのではないかという意見についてでございますが、
これについてはそれほど大きな意味の違いはないのではないか。また「障碍」はもともと「しょうげ」という読みで物事の発生、持続などに当たって妨げになること、転じて悪魔、怨霊などが邪魔をすること、障りなどという意味で、場合によるとより悪い意味のとらえ方もあり得るのではないかということが確認されてございます。



豊田記:「害」より「碍」のほうがより悪い意味であるとの見解は誤りです。「害」には語源的にも「人を殺める」という意味が現    存し漢字圏では広くその意味において使用されています。国語を司る文科省にしてこのような誤認があるとすれば大きな問    題です。「人を殺める」という意味を持つ「害」とかって「悪魔・怨霊が邪魔をする」という意味のあった「碍」とどちら    がより悪い意味であるかは自明でしょう。「害」と「碍」は明らかに違う意味を持つ漢字であり「大きな意味の違いはな     い」との解釈も誤認と断定してよいでしょう。


その結果、3つの意見のいずれとも字種選定基準に照らした結論を覆す理由にはならないというのが漢字小委員会の御判断でございます。


豊田記:上記の私の意見やお尋ねに対し是非にご回答を頂戴したいと思っています。



次に、現在障がい者制度改革推進本部が設置をされ、その中で障害の表記の在り方についても検討することとされていることが紹介されて、単に漢字の問題という枠を超える特別な事情があるとの御判断がなされてございます。その結果「障碍」は「しょうげ」としてこういう意味で使われてきたということをわかった上でも、なおかつ「障碍」という表記が望ましいんだという政府全体の合意が推進本部でなされるのであれば、その段階でもう一度「碍」の追加を検討するという対応方針が4月13日の漢字小委員会で了承され、先ほどの答申案(素案)のような書きぶりになってございます。


豊田記:なぜにこうも「しょうげ」「しょうげ」と大昔のことにこだわられるのでしょうか。仏教界ではいざしらず一般的に「障碍」は「しょうがい」と発音    されていたのではないでしょうか。「障碍」に悪い意味をもたせようという意図がありありと窺えます。



そういうことでございますので、以上のような考え方も踏まえまして、障害の表記の在り方について、本推進会議において御議論をいただければと存じます。
以上が1つ目でございます。


豊田記:この説明は「碍」を何としても排除しようという一方的なもので、とても中立的なものとは言えません。昨年の春秋2回のパブリックコメントで多数    の国民から「碍」を追加して欲しいとの要望が文科省に寄せられましたが、その意見の紹介も一切なされていません。



引き続きまして、障害の表記に関するアンケート調査の結果がまとまりましたので、資料の18ページの結果のポイントに沿って、本当にポイントだけを御報告させていただきます。
この調査でございますが、4月16日から18日までインターネット調査会社に委託をして実施いたしました。性別、年代、地域別のバランスに配慮して、合計9,000人分の回答を収集してございます。なお、回答者の中に障害があるという方が464人含まれてございます。


豊田記:「しょうがい」「しょうがいしゃ」の条約や法令などの公式表記をどうするかは不特定多数を対象としたアンケートには馴染まないものです。このア     ンケートの手法そのものが誤りです。しかも内閣府自らのものではなく業者に委託しての便宜的なもので、とてもこの問題に真剣に取組んでおられ     るとは思えません。期間も三日間とは異常な短さです。


結果のポイントですが、第1問の障害の表記を改めるべきとの意見については、賛成が21.9%に対して、反対が約2倍の43%に上りました。
第2問、問1で改めるべきと答え方約2,000名にどのような表記に改めるべきか聞いたところ「障がい」が約4割で最も多く「障碍」は7.8%にとどまってございます。
第3問、障害の表記を改める必要はないとの意見については、賛成が42.6%に対して、反対がその半分以下の19.8%にとどまっております。
第4問、障害者の表記をチャレンジドに改めるべきとの意見については、反対が3分の2に上り、賛成は約1割にとどまっております。
最後の第5問ですが、障害者の表記として自分自身の考えに最も合っているものを聞いたところ「障害者」「障害のある人」「障がい者」などが多くの支持を集め「障碍者」や「チャレンジド」はごく少数にとどまってございます。
アンケート結果のポイントは以上でございますが、お手元の冊子に細かなデータなども収録してございますので、適宜御参照いただければと存じます。


豊田記:アンケートの手法そのものが誤りであり、しかも設問たるや極めて誘導的です。要するに「障害の表記を改める必要はない」との結論を導き出すため    に実施された極めて意図的なアンケートと断言できます。アンケートの目的・主旨説明には「文科省は(碍)を常用漢字に追加しない方針」とか      「(碍)には悪魔・怨霊が邪魔をするという意味があり(害)よりもより悪い意味である」とかが強調して記載され、肝心の「内閣府では現在条約や    法令などの公式表記をどうするかを検討中である」といったことが書かれておりません。ましてや「碍」の追加を要望している国民の要望の根拠など    の説明も一切なしです。設問自体も稚拙で第1問と第3問などは完全な重複です。これが一国の内閣府のアンケートかと目を疑います。



最後に資料の47ページ以降に内閣府のホームページに寄せられた障害の表記に関する意見の抜粋、53ページ以降には前回の会議の際に文部科学省の高井政務官から御発言のあった障害の表記に関する4月21日の衆議院文部科学委員会の議事録の抜粋をそれぞれお付けしてございますので、御確認をいただければと存じます。
私からの説明は以上でございます。


豊田記:国会では早くからこの表記問題が採り上げられ活発な議論がなされています。3年前の川内議員による質問主意書の提出を含めると与野党議員が3回    も質疑を実施しています。国民の代表である国会議員が「障碍」への表記の変更を求めて国会に提案しています。この事実はこの説明の冒頭に述べら    れてもおかしくありません。


予備知識をお持ちでない推進会議の委員の皆様が議論を開始されるに先立って、冒頭このような誤認の多い説明を内閣府からインプットされれば混乱を惹起することは当然でしょう。ミスリードも甚だしい暴挙だとさえ思っています。


一体「改革」のスローガンはどこへ行ってしまったのでしょうか。