tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」と検討チームの報告

障がい者制度改革推進本部は8月に法令などの「しょうがい」の表記を検討するため(「障害」の表記に関する作業チーム)を設置し、関係者、有識者10名からのヒアリングを実施するとともに、広く国民の意見を募集するなどして意見を取り纏め11月22日の推進会議本会議に報告書(「障害」の表記に関する検討結果について)を提出、若干の議論が行われました。

報告書は内閣府HPに公開されており、議論の模様も録画で観る事ができます。

報告書は結論として(法令等における「障害」の表記について、現時点において新たに特定のものに決定することは困難)とし、(推進会議として「碍」を常用漢字へ追加するよう文化審議会に要望するかどうかは合意に至らず)と記述しています。

この報告を受けて、短時間ながら本会議で議論の結果、表記問題は継続審議とし「当面」は法令等の表記は従来の「障害」を使用することにせざるをえないものの、常用漢字への追加を要望するかどうかは「保留」とすることに決まりました。

同時に国民から寄せられた意見の4割が「障碍」表記支持であり定着している「障害」表記4割と拮抗していることが判明しました。交ぜがきの「障がい」が1割、その他新規の表記が1割だったとのこと。

常用漢字に含まれていない、馴染みの薄い「障碍」を4割もの国民が支持していることは驚きであり、人を殺めるとの字義を持つ「障害」と、かって悪魔怨霊がわるさをするとの意味もあったとされる「障碍」とどちらがより悪い意味かを国民が冷静に判断しつつある結果とも言えるでしょう。

「碍」の語源は「旅人が大きな岩を前にして、はてどうしたものかと思い悩んでいるさま」というのが通説(丸山一郎・元埼玉県立大学教授)になっています。字義は「さしさわり」などです。「障碍」は障碍者権利条約の主旨に沿った「社会モデル」の表記そのものです。

なお、当該報告書の結論部分(13ページ)の記述については現状との間に矛盾があり今後議論を呼ぶものと思われます。

【なお、今般の本作業チームにおける議論においては、「碍」が常用漢字に入っていないため、「障碍」の使用が広がらないとの観 点から、「碍」の字を常用漢字に追加するよう、推進会議から文化審議会に提言すべきとの意見も出されたところである。
  これについては、そもそも常用漢字は、分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安であって、常用漢字では ない漢字の使用が制限されているわけではなく、また、法令における「障害」の表記を「障碍」にするという結論に至っていない 現時点において、文化審議会に提言を行う十分な理由がないとの意見もあり、本作業チームとしては合意に至らなかった。】

常用漢字は単なる「目安」に過ぎないといいながらも、いざ自治体が「障碍」表記を採用しようとすれば、なんらかの「障碍」が存在するのが現実のようです。試しに佐賀県で「障碍」表記の採用を宣言してみられては如何でしょうか。何が「障碍」なのかがはっきりするでしょう。あるいは「障碍」は存在しないのかもしれませんが。


以下に推進会議資料【「障害」の表記に関する検討結果について】の「一般からの意見募集の結果について」の部分を記載します。

第3 一般からの意見募集の結果について(P10)

平成22年9月10日(金)から30日(木)までの21日間、内閣府、共生社会、障害者施策の各ホームページにおいて、意見募集を実施したところ、637件の意見が寄せられた。その内訳は、「障害」を支持する意見が約4割、「障碍」を支持する意見が約4割、「障がい」又は「しょうがい」を支持する意見が約1割、その他独自の表記を提案する意見が約1割であった。
それぞれの表記についての主な意見・理由は以下のとおりである。

1.「障害(者)」
 
[主な理由]

・社会モデルの観点からは、「障害」がふさわしい。

・表記や呼称を変更したとしても、いずれ同じ議論を繰り返すことになる。

・表記の問題よりも、障害者を取り巻く差別と偏見を取り除くことが先決。

・イメージでの議論が先行しすぎている。

・広く普及している現状がある。等

[主な否定的意見]

・「害」の字には、「公害」「害虫」「加害」等の負のイメージがある。等

2.「障碍(者)」

[主な理由]

・社会モデルの観点からは、「障碍」がふさわしい。

・表記を変えることにより、一般国民の意識が改善されることが期待できる。

・「害」の字には負の意味が入っているが、「碍」の字は価値中立的である。等

[主な否定的意見]

・知的障害のある者にとって、表記の変更は混乱を招く。

・表記を変更したところで、「障」=「さわり」、「碍」=さまたげであって、漢字の持つ負のイメージに変りはない。等

3.「障がい(者)、しょうがい(者)」

[主な理由]

・柔らかい印象があり、点字を利用している人でも書くことができる。

・移行期間という認識の下で、ひらがな表記が望ましい。

[主な否定的意見]

・平仮名の「がい」では実態が見えない。障害の社会性を曖昧にする。

・日本語として不自然。


以上は表記検討チームの報告書からの抜粋ですが、これに関連して以下コメントします。

〇 「障害(者)」表記支持の理由は殆どが消極的なものです。唯一「障害」=「社会モデル」とする説ですが、これは、おそらく「障がい」との交ぜがきを否定しての意見だと思われます。「障害」と「障碍」のどちらが社会モデルかは、今後の議論に待ちたいと思いますが筆者は結果は自明だと予想します。

〇 「障碍(者)」表記支持の理由として肝心の「障害」は「障碍」の誤用であるとする意見や、国際的視点から、同じ漢字圏での使用状況などの記述が欠落しています。表記の変更は混乱を招くとする否定的意見については、理解はできますがルビを振るなどして補う必要があるでしょう。

〇 総じて「障碍」の表記の導入については論理的反論は少ないと感じました。