tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「障碍」表記の普及状況(4)

引き続き著名な「障碍」表記の支持者について記します。


 国文学者でエッセイストの【高島俊男】は講談社発行の雑誌「本」の記事「漢字雑談」に「改訂常用漢字表の愚」と題する小論を寄稿されていますが、その中の「障碍」表記に関する部分を以下に転載します。これも友人の佐竹明和兄が記事をFAXで送ってくれたものです。


 「なかで、市町村役場方面から最も要望が強いのは身体障碍者の碍の字だと、かねがね聞いていた。碍は「さまたげ」の意で、障碍もさまたげの意である。つまりこれは、日本語に何千とある、同義語、ほぼ同義語を二つ並べて熟語とした、道路、優秀などど同種のことばである。「害」は危害を加える、害虫などと使う語であるから、多くの役所は「障害者」と書くのはしのびがたく、障がい者とまぜ書きしているが、是非碍の字を復活させてほしい、というわけであった。が、なぜかこの字を認められていない。ぶざまな書きかえ言いかえを是正する意図らしきものはかように少ない。」


 故人ですが元埼玉県立大学の【丸山一郎】教授のことは既に書きました。丸山先生は障碍者福祉論がご専門で1980年代には厚生省の専門官を務められたこともあり2008年にお亡くなりになるまで日本障害者協議会(JD)の副代表でした。先生が著された「障碍から五十五年ーまだ残る害」の小論に出会ったのが私が表記問題に取組むきっかけになりました。


 無類の本好きで知られる【和久井康明】(クラレ会長)は、日経紙インタビュー記事「領空侵犯」で国語教育の見直しを訴える中で漢字の使用制限撤廃を主張、(障害者は本来は「障碍者」と書くのに、「碍」が使えないから「害」を当てて、問題になっています。読めない漢字にはルビを振ればいい。)と述べておられます。同じく日経の「あすへの話題」の中で【佐藤英彦】(元警察庁長官・弁護士)は水五則を紹介し「障碍に逢い激してその勢力を百倍し得るは水なり」と「障碍」表記を用いておられます。水五則は禅僧の提唱になるものとのこと、むべなるかなです。同じく「あすへの話題」で【村上陽一郎】(東洋英和女学院大学学長)は次のように「障碍」を使用しておられます。(無論、病にある人、障碍に苦しむ人が、より良い状態を希求することに何の不思議もないし、問題もない。しかし、今の健康・安全ブームが、本当に生の肯定であり、良く生きることの積極的な肯定になっているのだろうか。病にある人、障碍に苦しむ人も、自らの生を肯定し、その生を愛し、より良く生きようとすることはできる。しかし、今の健康・安全ブームは、そうした生への積極的な肯定の姿勢よりは、不幸な状態、あるいは死への恐れではあっても、生を愛することとは、距離があるように思われてならない。)この三つともに友人の木村剛兄に知らせてもらったものです。


 日本語学者の【當山日出男】(立命大非常勤講師)も「障碍」表記の有力な支持者です。最初の出会いはネットでしたが朝日夕刊記事「障碍の文字社会変える」の取材でご一緒し、その後東京の都市センターで開催された表記をめぐってのシンポジウムでご一緒にパネリストを務めました。本職は僧侶で奈良の寺院の住職です。


 自治体の首長では佐賀県の【古川康】知事が「障碍」表記推進者の筆頭に挙げられます。個人での愛用はもとより、県知事としても「碍」の常用漢字への追加を国に働きかけられた実績があります。民主党政権下で「しょうがい」の法令などの表記を検討していた「障がい者制度改革推進本部」の福島瑞穂副本部長に直訴するとともに「推進会議」で知事自らプレゼンテーションを実施されたこともありました。石川県金沢市の【山野之義】市長も筋金入りの「障碍」表記の理解者です。その支持暦は古く市長就任前(少なくとも9年前の2004年)からネット上でも「山野ゆきよしメルマガ」などで自論を展開しておられました。「碍」が常用漢字に追加された場合、佐賀県金沢市は直ちに「障碍」表記を採用するものと推定されます。その他、芦屋市ほか全国の殆どの自治体(特に障碍福祉課)が表記には関心を持っているものと思われます。


 龍谷大学は大学として「障碍」の表記を正規に採用しています。加藤博史先生のリーダーシップによるものと伺っています。


 政界では【赤松正雄】【馳浩】【市村浩一郎】【松崎哲久】【川内博史】が「障碍」表記の理解者であり支持者であることは既に書きました。


 医療関係では耳鼻咽喉科の【熊田政信】先生が熱心です。「しょうがい」は「障碍」と表記されるべきで「障害」との誤用を放置するのは怪しからんと怒っておられます。慶大の【木島伸彦】心理学科准教授も「パーソナリテイ障碍」と障碍表記を採用されています。元東京足立病院臨床心理士の【赤松晶子】女史は貴重な精神医療の現場経験者ですが、私の働きかけを快諾され、今は熱心な「障碍」表記の理解者で推進者でもあります。友人の竹内啓介兄の紹介で赤松女史の知遇を得ましたが、ご父君は一橋大学の赤松要名誉教授(故人)で経済学の雁行形態論で有名です。


「障害」は元来、医学用語・学術用語として使用され不可侵の領域だと思っていましたが、最近になって医療関係者、学術関係者が「障碍」の表記を使用するのが散見されるようになっています。胃腸障碍・肝機能障碍・精神障碍・心的障碍などです。そうなるとどうしても「障害」と表記しなければならないケースは殆どないように思われます。少し乱暴かもしれませんが「障碍」と「傷害」の二つで事足りるようにも思いますが如何でしょうか。