tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」と戸田裕之氏

 翻訳家の戸田裕之氏がその訳書「時のみぞ知る」でobstacleを「障碍」と和訳されていたので、障碍の表記に関する資料集をお届けしたところ以下のようなご返事を頂戴しました。


 拝復 「障碍(害)の表記に関する資料集」をお送りいただき、ありがとうございました。私自身はこの言葉の表記について、それほど深い知識があるわけではなく、また、意識していたわけでもなく、ただ「害」という字が気になるので、という程度の思いで「碍」の字を使っていたに過ぎません。また、このような作業が行なわれていることも初めて知りました。まさしく蒙を啓かれた思いです。勉強になりました。ありがとうございました。運動が実現することをお祈り申し上げます。取り急ぎお礼まで。 敬具 戸田裕之 拝 6月2日 豊田徳治郎様


 「障害者」の「障害」表記に限らず一般のobstacleの意味での「障害」表記についても「害」に違和感を感じる人達が多数おられますがこれはその一例です。では、その違和感はどこから生じるのでしょうか。第一に「害」は語源的にも「人を殺める」との意味を持つ、極めてきつい言葉であり、「害」で構成される熟語が殆どネガテイブな意味を持つものだからと言えると思います。害虫、害毒、自害、公害などです。


 次に熟語はしばしば同じ意味の言葉を重ねて作られています。優秀、道路、停止、訂正などです。私は「障碍」は元来いずれも「さわり」という意味の「障」と「碍」を重ねて作られた熟語だと思っています。それが江戸末期になり西洋医学流入と共に新しい表記が必要となり、例えばmental disorderを医学用語として「精神障害」と翻訳し、古来の「障碍」との差別化をはかったのではないか。その後、医学用語であるはずの「障害」が「碍」と「害」で発音が同じ(「碍」は「ゲ」と発音される場合もありますが)ということもあって市中に出回り、普及し「障碍」と「障害」の混在現象が生じたのではないかと推測しています。


 戦前の医学分野以外の人達は「障」と「害」という全く意味の異なる漢字の組合せに戸惑い、違和感を感じつつも、これを許容していたのではないでしょうか。「障碍者」という概念は戦後のものであり、戦前は「障碍」も「障害」も全て例外なく事物を対象に使用されています。若し人を対象に使用する場面があったとしたら例外なく「障碍」表記が採用されていたでしょう。


「碍」と「害」の混在状態はGHQにより漢字制限を強制されるまで、即ち第2次世界大戦の終了後当用漢字が制定されるまで続くことになります。1946年(昭和21年)に制定された「当用漢字」から「碍」の字が外れたため国民の眼前からこの字が殆ど消え去り、消えてから66年を経過した今日では殆どの人達が読むことすら出来ない状態になっています。
これは「碍」の字が不必要になり、その出現頻度、使用頻度が自然に減衰していったのではなく、やむおえぬ事情があったにしても、飽くまで人為的な操作でこのような事態を招致したということは強調しておきたいと思います。    

 本件が障碍者の問題である前に「国語」の問題であるとする所以です。