tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」とパラリンピック-2

 漢字圏から東京オリンピックパラリンピックに来日する人たちが、日本で「障害」「障害者」の表記に出くわしたら驚くに違いないということは先に書きました。それで、このたび内閣府内に新設された2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室あてに提言書を提出することにしました。その全文を以下に掲載し公開します。読者各位からのご意見やコメントを期待しています。(この書簡は7月2日に発送済みです)

 提言書出状の名義人は社会福祉法人芦屋メンタルサポートセンター(略称AMSC)の理事長寺内嘉一です。寺内嘉一は神戸大医学部卒の医学博士で精神科医です。AMSCは芦屋市唯一のメンタルヘルス関連の総合福祉施設で心的障碍者の社会復帰を支援しています。わたくしも創設から深くかかわりましたが、加齢のため今は一線を退き評議員を務めています。

  AMSCの経営理念は第一に正しい知識の普及です。特にメンタルの分野はいまだ誤解や無理解が多く福祉施策の浸透が著しく妨げられ遅れています。まずは表記の改善からということで「精神障害」の代替表記として「心的障碍」を提唱しており、芦屋市では山中健市長にも公の場で「心的障碍」を使用していただいております。

 隗より始めよで「障害」の表記を「障碍」に改めることからスタートし、次なる目標として「心的障碍」の全国普及、ひいては漢字圏への輸出も夢に描いております。特に中国・台湾では「心的障碍」=「こころの障碍」ということでそのまま通用します。メンタルの分野は他の漢字圏においても日本以上に強烈なステイグマ・無理解が存在すると仄聞しております。

 以上が私どもが「障害」「障害者」の現表記の正常化に鋭意取り組んでいる所以です。



                             2014年7月吉日
2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室
室長 平田 竹男(内閣官房参与)様

                    
                    社会福祉法人芦屋メンタルサポートセンター
                        理事長 寺内 嘉一                            
   
【オリンピック・パラリンピックに関連した「しょうがい(しゃ)」の漢字表記】

冠省 掲題につき「しょうがい(しゃ)」の漢字表記に、正しい、全ての漢字圏で共通に理解可能な「障碍(者)」を採用されることを提言します。

 来る2020年のオリンピック・パラリンピックには近隣の漢字圏諸国より多数の障碍当事者並びに関係者の来日が予想されますが、中国・(香港)・台湾や準漢字圏の韓国では全て「しょうがい」を「障碍」と表記しています。台湾では「碍」と本字の「礙」の両方が使用されています。 「障害」と「がい」に「害」の漢字を当てているのは日本だけです。漢字圏では「碍」は hinder,obstacleやbarrierを意味するのに対し「害」は harm,hurt,injure 又は kill をも意味します。因みに中国ではバリアフリーを「無障碍」と表記しています。

 従い、オリンピック・パラリンピック関連の施設や標識あるいは各種資料に「障害(者)」と表記されていると彼等は皆驚くでしょう。驚くだけで済めばよいのですが差別表記であるとして人権問題に発展する怖れさえあります。不要の誤解が生じぬよう予め配慮しておくことが賢明だと考えます。「障碍(者)」表記の採用をお奨めする所以です。

鳩山内閣時に法令など公文書の「しょうがい」表記をどうするかの検討が閣議決定されましたが、一定の検討はなされたものの、時間の制約や政権交代もあって未だ結論が出ていません。検討の過程で内閣府障がい者制度改革推進本部)によりパブリックコメントが実施され、国民に「しょうがい」の公式表記を問いかけましたが、その結果では従来の「障害」支持が4割に対し「障碍」支持も4割と拮抗し、いずれにも決め難いとして「保留」になった経緯があります。

他方、文科省常用漢字の改定に当たりパブリックコメントを実施した結果、「碍」の字が追加希望字種の2位(実質トップ)に位置しました。このため「碍」の字を追加するかどうかは実質的に内閣府での検討結果と判断に委ねられた形で今日に至っています。いずれのパブリックコメントもオリンピック・パラリンピック招致決定以前になされたものです。

 従い貴推進室にてオリンピック・パラリンピック対策として「障碍(者)」表記の採用をご決断いただき、「碍」の字の常用漢字への追加を文科省宛に要望されれば、文科省サイドは同意される状況下にあると愚考します。

「しょうがい」の表記の問題は単に障碍者の関心事であるばかりでなく、幅広い分野の人々の関心事でもあります。例えば馬術の「障害飛越競技」は漢字圏での国際競技では「障碍飛越競技」と表記されています。日本碍子が社名(通称)をやむなく日本ガイシに変更したことは広く知られています。特に最近では「害」の誤用を正すため「碍」の復活を願う声が知識層を中心に高まっています。

 その背景として、他の漢字圏諸国同様、日本でも古くから終戦まで「障碍」表記が一般に使用されていたのですが(明治期に入りなぜか日本のみで「障碍」と「障害」が同義で使用され混在するようになりましたが)戦後の占領政策の一環としての漢字制限の流れの中で当用漢字(1946年制定)から「碍」の字が外され教育の場から消え、今や「碍」はなじみの薄い漢字になっています。

 1956年になり文部省は通達で障碍の「碍」を、ただ音が同じという理由だけで、全く語源や意味が異なる「害」で置換するよう指導しました。漢字制限の流れの中でやむをえぬ措置だったとはいえ、この差し替え指導が不適切であったとの指摘がなされているわけです。

「障碍」表記問題はこれまで国会でもたびたび採りあげられています。質問主意書として2回、文部科学委員会の質疑で2回、すべて「障害」は「障碍」と表記すべきとの立場での質問です。

以上のような背景もご勘案いただき、「碍」の常用漢字への追加と「障碍(者)」表記の採用をご検討賜りたく伏してお願い申し上げます。    
                                         敬具

*追伸:本書状についてのお問い合わせは下記あてにお願いします。

    担当: 豊田 徳治郎(社会福祉法人芦屋メンタルサポートセンター評議員
  Tel & Fax  0797-25-2202      
    E-mail ffwnn3081@kobe.zaq.jp   



【参考事項】                                      

 以下の皆さんは「障害」の「害」は誤表記であり「障碍」表記が正しい、よって「碍」を常用漢字に追加し、法令等の公式表記は「障碍」と正しく表記すべしと主張する人たち及び「障碍」表記を今も私的に使用している人たちです。(弊方にて承知している方々のみです)

(順不同 敬称略)

加藤 秀俊   評論家 社会学者 元日本育英会会長(現独法日本学生支援機構
佐藤 久夫   日本社会事業大学特任教授 前内閣府障害者政策委員会委員
馳 浩     衆議院議員 自民党
木村 剛    元住友電工役員
柏木 彰    元東レ
大久保 文雄  元三井物産 前芦屋市議会議員
市村 浩一郎  前衆議院議員 民主党
康本 昭赫   元産経新聞記者  
加治佐 俊一  日本マイクロソフト社 CTO(最高技術責任者)
古川 康    佐賀県知事
山野 之義   金沢市
平野 啓一郎  作家 第120回芥川賞受賞
丸山 一郎   元埼玉県立大学教授 元日本障害者協議会(JD)副代表 (故人) 
當山 日出男  国語学者 文字研究家
橋岡 昌幸   著述業
松崎 哲久   前衆議院議員 民主党 小説家
赤松 正雄   前衆議院議員 公明党
野地 芳雄   特例社団法人京都精神保健福祉推進家族会連合会会長 元京都府職員
戸田 裕之   翻訳家
川内 博史   前衆院議員 民主党
武田 和久   社会福祉法人 緑の風 理事長
赤松 晶子   元東京足立病院臨床心理士 
熊田 政信   医師 熊田耳鼻咽喉科院長
和久井 康明  クラレ会長
佐藤 英彦   元警察庁長官 弁護士
村上 陽一郎  東洋英和女学院大学学長
高島 俊男   国文学者 エッセイスト
中田 雅博   作家 緒方洪庵研究家
粕谷 嘉子   NPO法人世田谷さくら会理事長
寺内 嘉一   社会福祉法人芦屋メンタルサポートセンター理事長
               
         以上