tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」と廉田俊二理事長

ご縁があって西宮市のNPO、メインストリーム協会の廉田(カドタ)理事長にお目にかかりました。同協会は、障碍者自身が運営する、障碍者のための「自立生活センター」です。理事長ご自身が障碍をお持ちで、車椅子を自在に駆使して陣頭指揮を執り、重度障碍者をサポートしておられる姿を目の当たりにして感動しました。自分たちの役割は、地域で自立した生活をする(しようとする)障碍者を様々な面からサポートし、どんなに重い障碍があっても人生を楽しく自由に責任を持って、社会の主流「メインストリーム」を堂々と生きて行ける社会にすることが目標に掲げられています。

同協会の特長の一つは海外活動にあります。日本の国際協力機構(JICA)と連携して、海外の障碍者自立生活運動や自立生活センターを支援しています。地域は近隣の韓国、台湾に加え中央アジアから最近は中米諸国にまで足を延ばして支援の輪を広げています。

廉田理事長が台湾に出張されるというので「障害」の表記についての現地情報の確認をお願いしました。その結果、「障害」という熟語は漢字圏では使用されないどころか、そもそも存在しないということが確認されました。即ち「障」と「害」を組み合わせた「障害」という熟語は日本固有の造語であり、現在も日本にしかない熟語であるということです。従い他の漢字圏諸国ではバリアーを意味する熟語は「障碍」のみということになります。(台湾では「碍」の正字の「礙」を使用。傷+害=「傷害」はすべての漢字圏諸国にある)これは大きな収穫でした。

これまで文科省は「障碍」か「障害」かの議論の中で、明治期以降大正を経て昭和の終戦までは「障碍」と「障害」が併存し、むしろ「障害」が一般的であったとして、「障害」表記の歴史的正当性を主張してきましたが、「障害」が日本のみで通用する新造語となるとこの正当性は崩れてしまいます。

廉田理事長によれば、台湾では「障害者」という日本式の表記は殆ど知られておらず、従い、説明を聞いて初めて「障害者」の「害」の奇妙さに気付いた人が多かったとのこと、これは若干予想外でしたが、50年間日本の統治下にあったとはいえ、既に戦後70年が経過しており、今や日本式の「障害者」表記を現地の人々が目にされる機会は皆無なのでしょう。あるいは日本統治下にあっても「障害者」表記は表意文字として奇妙であり、現地で受け入れられなかったとも推定されます。

日本の障碍者施策の水準は、今や客観的には身体障碍分野を中心に、アジアはもとより、世界的にも上位に位置していると思われます。海外からのメインストリーム協会への支援・指導要請はますます増えることが予想されます。他方、膨大な人口を擁する中国は、成長が一時減速することはあっても中長期的には大きくなることは確実で、これに伴い漢字もより重要な位置を占めることになるでしょう。

日本は将来を見越して、「障害者」等不規則な表記は今から正常化しておく必要があるでしょう。2020年のオリ・パラには世界中から漢字を理解する人たちが多数来日します。《「障害者」表記はオリンピック精神に悖る》などとつまらぬイチャモンを付けられないよう念には念を入れて準備しようではありませんか。