tokujirouの日記

古来バリアーは「障碍」と表記されました。江戸末期に「障害」が造語されましたが終戦まで人に対して「害」がつかわれることはありませんでした。「障害者」は誤表記です。「碍」の字を常用漢字に加えて「障碍者」に正常化を急ぎましょう。漢字文化圏では「障碍」が常識です。

冊子『碍の字を常用漢字に』をPDFにて配布いたします。(複製・配布歓迎します) https://bit.ly/2OIP0nX

「碍」と地域フォーラムin Kobe

1月22日に神戸ポートアイランドのファッションマートで東京より推進会議の東室長と藤井議長代理を迎えて障碍者制度改革地域フォーラムin Kobeが開催されました。主として兵庫県下の障碍関係42団体から700名超の参加があり盛会でした。

指定発言者8名中の1人,Y.Y.さんが「障碍」の表記について発言されました。自分は「障碍」表記を支持し「碍」の字の常用漢字への追加を望んでいるが、推進会議の精神障害者団体がこれに反対していると聞いているがが反対の理由は何ですかという質問でした。

Y.Y.さんは19歳で統合失調症を発病、理解のあるご主人と結婚し現在79歳。最近身体障碍者手帳も取得したとのこと。 

これに対する東室長の回答は「特にある団体が反対しているというわけではなく、さまざまな意見があり集約できず決めかねている」というもので、時間の制約もあり、特に反対の理由には言及されませんでした。

多くの聴衆を前にしての心的障碍当事者からの発言は説得力がありました。表記に関する質疑は、回答の内容は別にしても、それなりに効果があったと思います。Y.Y.さんは表記のほかにも「身体障碍者手帳を貰って、そのメリットの多さに驚いた」などと
障碍間格差についても意見を述べられました。

なお、来場者に表記問題の背景などの周知をはかるため、以下のようなチラシを配布しました。


 

みなさまへ
                  「しょうがいしゃ」の表記について
                   
現在、内閣府障がい者制度改革推進本部)で「しょうがい」「しょうがいしゃ」の法令・条約などの公式表記をどうするかが議論されています。

従来の「障害」「障害者」表記は「害」の字にマイナスイメージがあるとして、現在11の道府県が「障がい」と交ぜがき表記を採用しており、多数の民間団体や個人の間でも「障碍者」や「障がい者」などが使用され、全国的に問題意識が広がっているからです。

確かに「害」には「人を殺める」との意味もありこの字を人に対して使用するのは適当ではないと思われます。「害」の熟語はすべて悪い意味で使用されています。

戦前は「障碍」という表記がありましたが終戦直後の1946年に制定された当用漢字から「碍」の字が外れ1956年には文部省が「障碍」を「障害」と書き換えるよう指導したこともあって、以後、半世紀以上も教育の場から「碍」の字が消えて、すっかりなじみのない漢字になっています。「害」と「碍」では意味が異なるので「障碍」から「障害」への書き換えは明らかな誤用であると言われています。誤用であるならば正されてしかるべきでしょう。

「碍」は「差し障り」という意味で「礙」の俗字であり語源は「旅人が大きな岩で行く手を遮られ、はてどうしたものかと悩んでいるさま」から来ているといわれています。同じ漢字圏の中国・韓国・台湾では一貫して「障碍」の表記が使用されています。

昨年9月に内閣府が実施した国民意見の募集結果では意見総数637件のうち、
従来の「障害」支持が4割あったのに対し、「障碍」の支持も4割あったようです。「障がい」の交ぜがき支持が1割、その他、新しい表記が1割でした。

現在「碍」の字は常用漢字に含まれておりませんが「障碍」と表記したい人が少なからずいる以上、常用漢字に追加しておくことが必要でしょう。

障がい者制度改革推進会議の第2次意見は【法令等における「障害」の表記については、当面、現状の「障害」を用いることとし、今後、制度改革の集中期間内を目途に一定の結論を得ることを目指すべきである】としつつ、今後の課題として【表現の多様性を確保する観点から自治体等が「障碍」という表記を使いやすくするべきとの意見もあり、「碍」を常用漢字に追加するよう提言することの適否について、併せて検討すべきである】としています。

障害者権利条約は「個人モデル・医学モデル」から「社会モデル」への転換を企図しています。「障害」表記は医学モデルであるのに対して「障碍」表記は「社会モデル」と言えます。

この表記問題は障碍の種別によって深刻さの度合いが異なります。身体障害者の場合はさほどの問題ではないかもしれませんが、精神障害者の場合は未だ「反社会的存在」とのステイグマが社会通念として存在しているので、より深刻な問題です。

民間での表記は自由であることを前提にして、法令・条約などの公式表記は「障碍」「障碍者」が適当ではないでしょうか。「碍」の字の常用漢字への追加も即時実施されてしかるべきでしょう。

                                            2011年1月22日

                                      NPO法人芦屋メンタルサポートセンター
                                         理事長   寺内 嘉一